予備校や個別指導塾など通う塾の候補が複数ある場合、塾の体験授業で決めようとしても決められないことは多いです。その理由は、塾の体験授業をただ受けるだけになっていて、何を判断基準にしていいか分かっていないからです。
体験授業で塾の何を見れば良いかを知れば、この塾に入って良かったと思えるような塾を見抜けるようになります。このページでは、塾選びで失敗しない体験授業の受け方について紹介していきます。
「分かった気」になっていないか確かめる
学校の授業と比べると塾の授業はとても分かりやすく感じることが多いです。実際、本当に分かりやすかった場合は問題ありませんが、「分かった気」にさせるだけの授業も存在します。
塾の授業で「分かった気」にさせられてしまう理由は2つあります。1つ目の理由は、「おもしろい授業」=「分かりやすい授業」と勘違いしてしまうことです。
塾講師は学校の先生と違って、授業がつまらなければ生徒は授業をとってくれません。そのため、塾講師は生徒に授業を飽きさせないよう、おもしろい話をしたり、おもしろいキャラを演じたりしますしかし、生徒によっては「おもしろい授業」=「分かりやすい授業」とはき違えてしまうのです。
たとえば、私が前に働いていた予備校では、毎回の授業で必ずおもしろい話をする英語の講師がいました。
ある生徒がその講師の体験授業を受けたので、感想を聞くと「講師の話がおもしろかった」といって授業に満足しているようでした。しかし、その生徒にその授業で何を学んだか聞くと急に沈黙してしまったのです。
つまり、この生徒は「授業がおもしろかった」=「分かりやすかった」と認識をしていたのでした。これでは、授業をいくら受けても「分かった気」になっているだけで、何も学んでいないのと同じになってしまいます。
2つ目の理由は、塾講師があたかも生徒が答えを思いついたかのように、生徒の考えを誘導するからです。
生徒の解けない問題があったとしても、塾講師が生徒に質問することで解答まで誘導して、生徒に問題を解かせます。すると、実際は塾講師の助けを借りて解けたにもかかわらず、生徒は「自分で問題が解けた」と錯覚してしまうのです。
たとえば、ある生徒が数学の体験授業を受けたときに、ある図形の面積を求める問題を解いていたとします。もしその生徒がその問題を解答できなさそうな場合、塾講師はさまざまな質問を生徒にして解答まで導きます。
質問の例としては「○○の定理を使ってみては?」や「点Pと点Aを結んで図形を分割するとどうなる?」などです。こういった質問を生徒にすることで、生徒は塾講師の言ったことを考え始めます。これを繰り返していくと、あたかも生徒が自分でこの図形の面積の値を出したかのように感じるのです。
このように、体験授業で「わかった気」になってしまう原因は2つあります。1つ目は、塾講師のおもしろい授業により、逆に分かりやすいと勘違いしてしまうことです。2つ目は、塾講師が生徒に質問という形でヒントを出すことで、問題を解けたような錯覚に陥ることです。
もちろん、塾講師に悪気があってこういったことが行われている訳ではありません。塾講師は目の前の生徒に分かってもらおうとして、逆に「分かった気」にさせてしまっているのです。
しかし、自分が本当に授業の内容を理解しているのかを確認する方法はあります
それは、「塾のスタッフや親、友達などにその体験授業で教わった内容を説明する」という方法です。もし他人に授業の内容を説明できないようであれば、授業の内容を「分かった気」になっているだけとみなせます。
他人に授業の内容を説明するには、自分自身できちんと内容を理解している必要があります。授業で出てきた用語を記憶できていても、その用語がどんな意味を持っているか説明できなければいけないのです。
たとえば、英文法の現在完了と過去完了の体験授業を受けたとします。このときに、体験授業の講師が分かりやすかったと感じても、それは「分かった気」になっているだけかもしれません。そこで、他の人に授業で習ったことを説明して「分かった気」になっていないか確認する方法を用います。
もし「現在完了は~、過去完了は~」のように、他の人に授業で習ったことを説明できれば問題ありません。逆に、現在完了と過去完了の意味や使い方があやふやになっている場合は、「分かった気」になっているだけです。
このように、体験授業を受けるときに、この方法を使えば「分かった気」になっているだけなのかを確かめられます。他人に授業で習ったことを説明できれば、学力の伸びる授業だったと判断することができるのです。
入塾した後も教えてもらう講師の体験授業を受ける
個別指導塾の体験授業を受ける場合、体験授業をやる講師と入塾してから実際に授業を行う講師が違うことがあります。こういったことが起こる理由は2つあります。
1つ目の理由は、個別指導塾ではその塾のエース講師が体験授業を行うことが多いからです。塾はエース講師に体験授業をさせて、授業に対する生徒の満足度を上げたいと考えています。
実際、多くの個別指導塾では講師間で実力の差があるため、経営上の理由からエース講師に体験授業を任せてしまいます。そして、いざ入塾するとなると、その講師の担当生徒の人数が多いために、他の講師へと回してしまうのです。
こういったことを防ぐには、体験授業を受ける前に体験授業の講師がそのまま受け持ってくれるか確認した方が良いです。塾に一言確認を入れるだけで、塾は体験授業と入塾後の授業で意図的に講師を入れ替えることはできなくなります。
2つ目の理由は、入塾した場合に何曜日に通うか生徒から塾に伝えていないことが多いからです。多くの生徒は、体験授業を行う日に何曜日に通う予定かを塾に伝えます。
しかし、そのタイミングで塾に伝えていては、その曜日に出勤できる講師を塾もすぐには用意できません。そのため、体験授業を行う講師と、入塾後に教えてもらう講師が違ってしまうのです。
私がかつて働いていた個別指導塾では、生徒が体験授業を受けた曜日と塾に通う予定の曜日が違うことがよくありました。
実際、私が行った体験授業で入塾した生徒が、他の講師の生徒となってしまうと残念で仕方ありませんでした。もちろん、私の体験授業を受けて入塾した生徒にとってもうれしいはずがありません。
もしその生徒が体験授業前に何曜日に通う予定か塾に伝えていれば防げたことなのです。
このように、個別指導塾の体験授業を受ける際には、体験授業の講師が入塾後も教えてくれるかが重要になってきます。
塾によっては、体験授業をその塾のエース講師に行わせて、入塾後は違う講師に担当させることがあります。しかし、塾に対して教えてくれた先生がそのまま受け持ってくれるか確認することで、こういったことは防げるのです。
さらに、「入塾したら何曜日に通うか」を体験授業前に塾に伝えたほうが良いです。このことを体験授業前に塾に伝えることで、入塾後に担当してくれる講師に体験授業を行ってもらえます。
塾の雰囲気を確認する
体験授業では塾の授業を体験するだけでなく、その塾の生徒や周りの雰囲気も知る必要があります。
もしかすると、塾の雰囲気は体験授業でなくても、塾の見学を行えば分かるのではと思う人もいるかもしれません。しかし、塾の見学などでサッと塾を見回すよりも、体験授業を通して塾の雰囲気を知る方がより塾の実態を知ることができるのです。
実際、私が高校生だったとき、ある大手予備校の体験授業を受けて雰囲気を知れたために、結局入塾しなかった経験があります。当時、その予備校の体験授業を受ける前に教室内を見学したのですが、そのときは勉強に集中できそうな静かな印象を受けました。
しかし、体験授業を受けてみると、予備校の前の通りの車の騒音や周りの生徒のひそひそ声などが想像以上に気になったのです。結局、そのことが決め手となり、私はその予備校には入りませんでした。
このように塾の体験授業では授業の内容はもちろんのことですが、塾の周りや生徒の様子も見なければいけません。塾の体験授業を受けることで、塾を見学しただけでは分からない塾の雰囲気まで見えてくるのです。
服装や親の同伴について
大手予備校などの格式がある塾の体験授業を受けるとき、学校の制服で行かなければいけないか迷うかもしれません。
大手予備校に限らずどんな塾でも、体験授業の際には制服を着ていく必要はありません。もちろん、あまりにも派手な服装で他の人の目につくようなのはNGです。しかし、基本的には服装がダメという理由で入塾できないことはありません。
塾や大手予備校の入塾の基準は服装ではなく。授業について来られるだけの頭脳と熱意が入塾の基準になるのです。
また、塾の体験授業のときに親は同伴した方がいいのか迷う人もいると思います。実際のところ、親が子供の体験授業に同伴するかどうかは、親によるところが大きいです。
私が今まで見てきた生徒の多くは、親を同伴せずに1人で体験授業を受けに来ていました。または、最初に塾のスタッフと親と生徒で三者面談を行い、そのあと生徒だけで体験授業を行っていました。
しかし、親がどうしても自分の目で授業を確認しておきたい場合は、体験授業に同伴しても問題ありません。
親が体験授業に同伴すれば、生徒と同じ目線で塾や講師の雰囲気、授業の様子を見ることができます。そうすることで、塾を決める際により活発に生徒と意見交換ができるメリットもあります。
以上が、塾の体験授業に行く際の服装や親の同伴についてです。塾の入塾基準において、服装は関係ないので私服で体験授業に行っても大丈夫です。また、親が体験授業に同伴するかどうかはどちらでも問題ありません。
候補の塾の体験授業はなるべく早く受ける
慎重な性格の人は塾選びも慎重になって、いろんな塾の体験授業を受けるかもしれません。もちろん、候補となる塾の体験授業をすべて受けて塾を決めるのは悪いことではありません。しかし、塾の体験授業を受けるときは、短期集中で受ける必要があります。
あまりに長い期間をかけてしまうと、塾選びに時間がかかりすぎてしまい逆に悪影響となってしまうのです。
たとえば、塾選びに時間をかけすぎてしまうと、最初に塾に入ろうと思ったときの熱意を失いやすくなります。塾を探している人は、どんな人であれ、塾を探すきっかけとなる出来事があります。その出来事があった当初は、塾を探して勉強しようと思い立ったはずです。
けれども、そのきっかけとなる出来事から時間がたつと、その熱意が失われていき、入塾のときのモチベーションが低くなってしまうのです。
また、定期テスト対策で塾に通おうとしている人も注意が必要になります。
たとえば、次のテストまであと5週間の状況で塾を探そうと考えた場合、2週間ほどで塾を決めなければいけません。もし3週間かけて塾選びをしたとすると塾に入ってから勉強できる期間は2週間になります。一方、2週間で塾選びを行うと、塾に入ってから3週間も勉強ができるのです。
前者と後者で差は1週間しかありませんが、その1週間で定期テストの点数は数十点も変わってきます。このとき、体験授業を受けた週に入塾できると考えても、体験授業を受けられる期間は2週間になります。
候補となる塾の体験授業をすべて受けきるのに2週間以上かけてしまっては意味がありません。定期テスト対策で塾に通うはずなのに、塾選びに時間をかけることで定期テストの点数が良くならないのです。
このように、塾の体験授業を受ける際には、なるべく早く塾選びをする必要があります。そのためには、塾の体験授業をなるべく早く受けなければいけません。
まとめ
以上が、塾選びで失敗しない体験授業の受け方になります。以下に本ページの要点をまとめてみました。
体験授業の受け方で気をつけるポイントを理解できた人は、有能な塾を選ぶ力がついたと言えます。あとは、通う候補の塾の体験授業を受けて、どの塾に通うか見極めるだけです。
自分の目的を果たせる塾を見つけるためにも、まずは体験授業を受けてみましょう。
塾選びで失敗しない体験授業の受け方
- 「分かった気」になっていないか他の人に体験授業で習ったことを説明して確認する
- 体験授業で教えてもらう講師が入塾後も担当してくれるか確認する
- 入塾した場合に通う曜日を伝えて、担当できる講師に体験授業をしてもらう
- 体験授業で塾の雰囲気を確認する
- 服装は私服でOK、親の同伴は自由
- 塾の体験授業はなるべく早く受ける必要がある
当サイトでよく読まれている記事3選
受験勉強を始めようと思って、塾・予備校を調べてみてもどこの塾が自分に合っているのかって分からないですよね?
実は、大学受験で第一志望校に合格するためには、どこの塾・予備校に通うかはそこまで重要ではありません。
というのも、100%合格させてくれる塾・予備校などこの世に存在しないからです。
むしろ、その塾・予備校の授業やシステム、スタッフを使ってどれだけ質の高い学習習慣を身に付けられるかに合格はかかっています。
私は、過去に大学受験の塾・予備校2社で、生徒に指導を行ってきました。その中で、志望校に合格した生徒は皆例外なく、塾・予備校を使い倒すことで、質の高い学習習慣を身につけている人達でした。
彼らは、塾の自習室に毎日通ったり、分からないところを徹底的に講師に質問したりするなど、塾の費用以上に塾に価値を見出していたのです。
ただ、これは塾・予備校にそういった質の高い学習習慣を身につけられる環境があってこその話になります。
第一志望の大学に合格するためにも、まずはどの塾・予備校でどんな授業、どんなサービスを行っているのかを知ることは重要です。それを頭に入れた上で、ここでなら質の高い学習習慣を身につけられると思える、自分に合った塾を選びましょう。