映像授業の大手予備校と言えば、河合塾マナビスと東進ハイスクール・衛星予備校の2つが挙がります。どちらも全国規模で展開している大手予備校です。
しかし、マナビスと東進でサービスや料金がどう違うのか分からない人は多いと思います。本ページでは、河合塾マナビスと東進ハイスクール・衛星予備校のサービスの違いと料金について徹底比較していきます。
マナビスと東進の授業を徹底比較!
「テキスト主体」のマナビス
マナビスの映像授業の特徴は、テキストを軸にして授業を構成している点です。マナビスで使用されるテキストは、河合塾が過去の大学入試で出題された問題を徹底研究して作成したテキストになります。
講座を担当している講師がその講座のテキストを作っている訳ではないので、同じレベルの講座であれば、違う先生の授業であっても同じテキストを使います。
「講師に自由にテキストを作らせるよりも、入試の頻出項目をまとめたテキストの方が良い」というのがマナビスの考えです。
実際、マナビスのテキストに載っていた問題が、センター試験や難関大学・有名大学の入試で出題されています。以下は、マナビスのテキストの問題が実際の試験でヒットした例の一部抜粋です。
ここまでテキストを推していると、「テキストは優秀だけど、講師の方はどうなのか」と思われるかもしれません。しかし、映像授業を担当している講師は、河合塾の人気講師です。その人気講師がマナビス専用の授業として映像授業を撮っているので、講師の質も低くありません。
また、マナビスの講座はレベル別で分かれており、各レベルの講座に2人の担当講師がついています。仮に自分の受けている講師の授業がダメだったとしても、もう片方の講師の授業を受けることができるので、講師と相性が合わなくても対応できるようになっています。
「講師主体」の東進
テキストを軸にしているマナビスとは対照的に、講師を授業の軸としているのが東進です。東進は、講師を最大の強みとしており、塾・予備校界の中でも群を抜くほどの報酬を支払って、人気講師を呼んでいます。
しかも、東進ではその講師が自由に授業の内容を決められるため、講師の色が出た授業が展開されていきます。
なぜ東進が講師主体の授業を展開しているのかというと、それは講師同士で競わせてより質の高い映像授業を作らせようとしているからです。
東進では、講師の給料が高い一方で、講師の入れ替わりが激しいです。人気が出なかった講師はすぐに居なくなり、別の予備校の人気講師が新しく入ってきます。
そうすると、東進に在籍している講師が長く東進に居続けるためには、より質の高い授業を提供して、多くの生徒に見てもらうしかありません。そこで、他の講師よりも良い授業をしようと、講師同士で競争原理が働き、自然と質の高い授業ができあがっていく仕組みになっているのです。
実際、東進では同じレベルの講座に何人かの講師がいて、それぞれの講師が分かりやすい授業をしようと、さまざまな工夫を行っています。
たとえば、テキストはマナビスのように決まったものを使うのではなく、講師自身が作っており、講座によってテキストの文量は違ってきます。ほとんど何も書いていないテキストもあれば、みっちりと何ページにもわたって書いてあるテキストもあるのです。
また、授業の構成も講師の裁量によって大きく変わってくる点です。講座によっては、予習が必要なかったり、毎回15分ほどの雑談が入ったりすることもあります。
このように、マナビスも東進も同じ映像授業を主体にはしていますが、その方向性は真逆と言っていいです。「テキスト主体」のマナビスか、「講師主体」の東進か、どちらが良いというのはありません。
体験授業などで実際に両方の授業を受けてみて、どちらの授業でやっていけそうか、自分に合う方を選びましょう。
同じ映像でも授業システムが違う
自宅受講ができるのは東進
マナビスと東進は、どちらも映像授業を主体としている予備校です。しかし、大きな違いとして、東進は自宅で受講ができるものの、マナビスでは自宅での受講ができません。
そのため、自宅で受講ができる東進は、部活で忙しい人に向いている予備校だと言えます。
実際、私の知っている人で、部活に励みつつ、東進の自宅受講を活用しながら第一志望だった明治大学に合格した人もいます。
彼は、毎年地区大会で上位に入る強豪のサッカー部に所属しており、放課後のほとんどは部活で時間がつぶれていたので、毎朝早く起きて自宅で受講を受けていました。
このように、部活で忙しくても、時間の有効活用をできるのが東進の自宅受講の魅力です。
一方で、マナビスは技術的な問題で自宅受講ができないのかというと、そうではありません。実は、マナビスはあえて自宅で受講をできないようにしているのです。その理由は、自宅受講をしてしまうと、どうしてもダレてしまって、授業に集中できない可能性があるからです。
家には、ゲームやテレビなどの誘惑がある一方で、校舎のように周りで必死に勉強している人がいるわけではありません。そのような環境で受講をしてしまうと、授業の内容が頭に入らず、ただ受けるだけになってしまう可能性があります。
そういったことを避けるために、マナビスでは校舎に来て集中して授業を受けられるよう、自宅での受講を禁止しているのです。
マナビスは授業の予習復習が絶対
マナビスと東進の授業の違いとして、マナビスでは、どの授業も必ず予習・復習をしないといけません。マナビスの授業はすべて、授業を受ける前に問題を解いて予習を行い、その解説を授業で行う形式です。
さらに復習に関しても、授業を1コマ受け終わる度に、チェックテストがあります。そのチェックテストの結果を踏まえて、チューターと呼ばれる大学生と一緒に、授業の内容の理解度を確認する時間もあります。
それと比べると、東進の復習ツールは授業後の確認テストしかないため、授業の密度で言えば、マナビスの方が高いです。
学校の授業でもそうですが、マナビスでは、予習・復習をするのは当たり前で、その当たり前のことをどれだけしっかりとやれるかを大事にしています。授業のシステムに予習・復習を組み込んでしまうことで、映像授業をより有意義なものにしていく狙いがあります。
一方、東進では、マナビスのように全体の方針として予習・復習のシステムが確立しているわけではありません。ただし、授業の予習・復習も講師の裁量によって決められています。
そのため、東進全体での復習ツールは、授業後の確認テストしかないものの、講座毎に講師がどのように復習するかを定めているのです。また、東進の授業もほとんどの授業で予習が必要ではありますが、一部の授業では予習が必要ありません。
たとえば、東進の看板講師である英語の安河内先生の授業では、予習がいらないことで有名です。もちろん、安河内先生が授業の予習を不要としているのには理由があります。それは、予習以上に復習をものすごく大事にしているからです。
しかも、安河内先生の場合、ただ問題を解いて復習するのではなく、授業でやった英語の本文を何回も音読して復習するよう促しています。
実際、安河内先生の授業を見てみると、序盤の授業では1コマあたり10回以上「音読」というワードが出てくるほどです。東進では、安河内先生の授業を受けて、英語の本文を空で言えるくらい音読したことで、英語の点数が劇的に上がった生徒が何人もいます。
このように、東進の授業では、復習方法や予習方法を講師が独自に定めています。そのため、その講師のやり方が水に合えば、間違いなく点数を伸ばすことができるでしょう。しかし、マナビスほど、システムとして予習や復習が確立しているわけではないので、授業を受けて、そのままにならないように注意が必要です。
学生チューターの役割
マナビスにも東進にもチューターと呼ばれる大学生のスタッフがいます。しかし、その役割は、マナビスと東進で大きく異なっています。その違いについて解説していきます。
マナビスでは授業後にアドバイスタイムがある
先ほど説明したように、マナビスでは、授業後にチューターと一緒に授業の内容を確認する時間があり、アドバイスタイムと呼ばれています。
アドバイスタイムは、授業で疑問に思ったことや、理解しきれなかったことを質問していく時間です。仮に、授業の内容を完璧に理解していて質問することがなかったとしても、チューターに授業で学んだことを説明しなければいけません。
マナビスが大学生をわざわざ雇ってそういった時間を設けているのは、やはり復習に力点を置いているからに他なりません。
アドバイスタイムという「疑問を解消しやすい環境」「自分の口で学んだことを説明する環境」を作ることで、より質の高い復習をしてもらおうという狙いがあります。
たとえば、授業後の小テストや予習のときに間違えた問題を、生徒に解説させたりしています。自分が間違えた問題をいざ解説しようとすると、完璧な理解が必要になってくるので、分かっているつもりになっていないかをチェックすることができるのです。
ただし、毎回の授業でアドバイスタイムがあるので、授業の内容を完璧に理解した人からすると、面倒なシステムかもしれません。実際、マナビスのチューターをやっていた人に話を聞くと、「生徒によってはアドバイスタイムが一瞬で終わったり、ほとんど雑談するだけになったりする」と話していました。
とは言っても、一緒に内容を確認しながら復習するアドバイスタイムのようなシステムは東進にはありません。生徒がただ映像授業を受けるだけにならないように、マナビス独自の工夫がなされていると言えます。
東進では週1回のグループミーティングで学習管理
一方で、東進の場合、「担任助手」と呼ばれる大学生のチューターが存在します。担任助手は、生徒何人かと週に一度、グループミーティングと呼ばれる面談を行います。
そのグループミーティングは、予定通り受講が進んでいるか、勉強計画に狂いはないかをチェックし、学習管理をする場になっています。
この担任助手の存在の良いところは、マナビスのチューター以上に生徒との関わりがあることです。グループミーティングでは、勉強計画について話す他に、勉強以外の悩みであったり、担任助手の大学生活について聞けたりすることができます。
そういった関わりを持てるので、悩んだときに信頼できる相談相手として担任助手を頼ることができます。また、授業の質問に関しても、マナビスのようにシステムになっていないだけで、授業内容に関する質問は可能です。
ただし、東進の担任助手は、生徒との関わりが深くなるが故に、デメリットも存在するので注意が必要です。関わりが深くなるということは、その担任助手がどれだけ有能かが重要なポイントになってきます。
あまり有能でない担任助手が担当についてしまうと、予定管理をきちんとしてもらえなかったり、良いアドバイスがもらえなかったりします。そうすると、逆にグループミーティングの時間を有意義に感じられなくなり、時間の無駄であると感じてしまうのです。
優秀な担任助手がいるかどうかは、校舎によってだいぶ大きな差があります。これに関しては、実際に足を運んで確かめてみないと分からないことなので、東進に通う際には、担任助手の質の見極めは必須です。
このように、学生チューターの役割に関しても、マナビスと東進で大きく違ってきます。マナビスでは授業システムの下、学生チューターはアドバイスタイムと呼ばれる授業後の質問応対を行います。
それに対して、東進では学生チューターが予定管理から質問応対まで行うので、マナビス以上に関わりが深くなります。その分、校舎によって当たりハズレが激しいので、体験授業などで必ず校舎に行って、スタッフの対応や雰囲気を見極める必要があります。
マナビスと東進の費用を徹底比較!
マナビスと東進で迷った場合、費用が高くつくのはどちらか気になるところだと思います。結論から言えば、授業以外に掛かる費用は東進の方が少し高いですが、授業料に関してはマナビスと東進でほぼ差はありません。
分かりやすく比較するために、マナビスと東進で1コマ90分の講座(20コマ)の金額を比較すると以下の通りです。
どちらも大手予備校というだけあって、高めの料金設定になっていますが、ほぼ値段は変わりません。
また、実際に通塾した場合に掛かる費用も見ていきます。今回は、以下のスペックの高校生で、マナビスと東進で見積もりをとった場合の比較を行いました。
高3の夏休み直前の駆け込みで予備校に入塾しようとしているAくん。かなり追い込まれている状況ではありますが、マナビスと東進の両方で見積もりをとってみました。まず最初にマナビスの方をご覧ください。
続いて、東進の見積もりがこちら↓です。
両者とも提案された講座は、英語が文法と読解の講座で、数学がⅠ・A/Ⅱ・Bと数学Ⅲの演習、物理も演習の講座と、ほぼ内容は変わりませんでした。
しかし、合計費用の金額だけ見ると、東進の方が7万円ほど高くなっています。さらに、合計コマ数を比較すると、マナビスが160コマ、東進が135コマとなっており、東進の方はコマ数が約1講座分だけ少ないです。
このように、東進の方がマナビスと比べて少し割高になっているのには、3つの理由があります。以下で詳しく見ていきましょう。
理由① 東進には模試費が含まれている
まず、東進の方では、「模試費」の¥25,920円が費用の中に含まれています。しかし、マナビスの方にはそういった費用がありません。マナビスでは、模試に関しては河合塾の模試をその都度個人で申し込んで、模試代を払うことになります。
東進の模試費は、高2生から東進に通っている生徒が、東進の模試をすべて受けた場合、得をする計算になっています。しかし、8月から入塾するA君の場合は、その後の東進の模試をすべて受けても、ムダに模試代を払っていることになるので損です。
また、この模試費は、東進に入塾する場合、必ず払わなければならない費用なので、外すことはできません。そういったことを踏まえると、模試費に関しては、東進の方がマナビスよりも割高であると言えるでしょう。
理由② 東進には高速基礎マスター講座がある
東進には、「高速基礎マスター講座」と呼ばれる、授業ではない講座があり、その分コマ数の比較をすると、東進の方が約1講座分だけ少なくなっています。高速基礎マスター講座は、スマホやパソコンで、英単語や英熟語の問題を解いて覚えていく講座です。
マナビスにも似たようなシステムがあるのですが、東進の高速基礎マスター講座の方が、ボリュームも多く、機能性も高いです。
実際、東進に入塾して第一志望校に合格した生徒に、東進の便利なサービスは何かと聞くと、多くの人が「高速基礎マスター講座」と答えます。高速基礎マスター講座は、英語の根幹となる英単語・英熟語を覚えやすくするツールなので、上手に使えば1講座分以上の価値があると言えるでしょう。
その意味では、マナビスから提案されたコマ数と比較すると、東進の方が少ないですが、中身に関しては1講座分かそれ以上は隠されていると言えます。
理由③ 東進の担任指導費が少し割高
東進もマナビスも、スタッフの学習サポートの費用として、「担任指導費」と「学習サポート料」がそれぞれ掛かります。しかし、中身を見てみると、マナビスは、月々¥5,400円なのに対して、東進は年間の一括払いで¥75,600円となります。
東進では、年の途中に入塾した場合であっても、担任指導費は¥75,600円で変わらないため、月謝制のマナビスと比べると割高です。
実際、今回のA君のケースでは、マナビスの場合、年間でかかる学習サポート料が8月~1月(開始月の翌月~高3の1月)分で、¥54,00円×6ヵ月=¥32,400円となります。
東進の担任指導費と比べると、その差額は、なんと¥43,200円にもなるのです。もちろん、マナビスと東進で学生チューターの役割が違うなど、サービスが同じ訳ではないので一概に東進の方が高いとは言えません。ただ、東進の方がマナビスと比べて学習サポートの費用が高くなることは念頭に置いておいた方が良いでしょう。
以上が、河合塾マナビスと東進ハイスクール・衛星予備校の徹底比較でした。どちらも同じ映像授業の予備校ではありますが、授業の作り方や学生チューターのあり方など方向性はまったく違います。
マナビスか東進かで迷った場合は、「どちらが自分にとって適した環境なのか」を考えることが重要です。上で説明してきたように、どちらの予備校も一長一短があり、必ずしもどちらが良いとは断言できません。両者の特徴を理解すると同時に、自分の通おうとしている校舎の良し悪しも見定める必要があります。
まずは、マナビスと東進の両方で体験授業を受けてみましょう。「校舎の様子はどんなか」「スタッフは信頼できそうか」「通ったときの生活はどうなるか」など体験授業に行くことで分かることはたくさんあります。その中で自分に最適な受験勉強の環境を見つけて、第一志望校合格を目指していきましょう。
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受験勉強を始めようと思って塾・予備校を調べてみても、どこの塾が自分に合っているのかって分からないですよね?
実は、大学受験で第一志望校に合格するためには、どこの塾・予備校に通うかはそこまで重要ではありません。
というのも、100%合格させてくれる塾・予備校などこの世に存在しないからです。
むしろ、その塾・予備校の授業やシステム、スタッフを使ってどれだけ質の高い学習習慣を身に付けられるかに合格はかかっています。
私は、過去に大学受験の塾・予備校2社で、生徒に指導を行ってきました。その中で、志望校に合格した生徒は皆例外なく、塾・予備校を使い倒すことで、質の高い学習習慣を身につけている人達でした。
彼らは、塾の自習室に毎日通ったり、分からないところを徹底的に講師に質問したりするなど、塾の費用以上に塾に価値を見出していたのです。
ただ、これは塾・予備校にそういった質の高い学習習慣を身につけられる環境があってこその話になります。
第一志望の大学に合格するためにも、まずはどの塾・予備校でどんな授業、どんなサービスを行っているのかを知ることは重要です。それを頭に入れた上で、この塾でなら質の高い学習習慣を身につけられると思える、自分に合った塾を選びましょう。