東進やマナビスといった大手予備校など映像授業を売りにしている塾は多いです。大学受験を見すえて塾選びをするとき、映像授業で学力は伸びるのか、本当に良いものなのか考えてしまいます。今回は、どんな人が映像授業に向いていて、どんな人が不向きなのか、またそれを見極める方法について紹介していきます。
映像授業に向いている人の特徴
普段忙しくて時間がない人
映像授業は授業を受ける時間に縛りがないため、部活や習い事などで忙しい人に向いています。
集団塾や個別指導塾のライブの授業だと、時間割が決められていて、普段忙しい人にとって自分の予定と合わせるのが大変です。しかし、映像授業では自分の好きなタイミングで授業を受けられるので、普段忙しくても自分の予定と合わせやすくなります。
たとえば、部活などで時期によって忙しさにムラがある人は映像授業がピッタリです。
サッカー部や吹奏楽部などの部活は、大会やコンクールが近づいてくると練習で忙しくなります。そういった時期は、なかなか勉強に時間を当てられないため、塾の授業を進めることができません。一方で、大会やコンクールが終わると、部活がひと段落して、塾の授業も普段よりは進められます。
映像授業であれば、忙しくない時期に、忙しくて受けられなかった分の授業を受けることができます。勉強に集中できるときに一気に授業を進められるので、普段忙しい人にとっては効率よく勉強できるようになるのです。
また、映像授業は映像を停止して授業を何回かに分けて見ることができます。普段忙しくてまとまった時間がとれない人でも、授業を分割することで授業を進められるのです。
たとえば、塾に行っても時間が1時間しかなく、90分の授業を受けきれない人がいたとします。そのような人は、90分の授業を45分まで見て、次の日に残りの45分を見ることが可能です。この授業の受け方をすれば、2日で1コマは受けられるので、忙しくても少しずつ勉強を進めることができます。
このように、普段忙しくて勉強する時間がない人でも映像授業を使いこなせば、効率的に勉強を進められるのです。
自分で建てた勉強の予定をきちんと守れる人
自分で勉強のスケジュールを建てて、それをきちんと守れる人は映像授業で学力を最大限に伸ばせる人です。映像授業は、授業を自分の好きなタイミングで受けられるので、自分のやる気さえあれば、どんどん授業を進められます。つまり、自分次第で授業を先に進むこともできれば、遅れてしまうこともあるのです。
もし自分で建てた予定をきちんとこなせる人であれば、授業が遅れることはないので、授業は順調に進んでいきます。結果的に、授業のペースが周りより早くなって勉強が進むので、学力が伸びるのです。
もちろん、自分で建てた勉強の予定を守れる人は、わざわざ塾に行かなくても独学で勉強できます。しかし、独学では勉強時間は映像授業と変わらないかもしれませんが、勉強内容は映像授業ほど進むことはできません。映像授業の方が、参考書よりも単純に情報量が多いので、同じ時間でも勉強の内容が濃くなるからです。
たとえば、かつて私が働いていた予備校で、高校の地理の範囲をすべて教える映像授業を春休みだけで見終えた生徒がいました。
授業は90分×20コマあったのですが、その生徒は春休みにやりきれるよう自分で予定を建てて実行したのです。最終的に、その生徒はその授業で初めて地理を習ったにもかかわらず、春休み明けにあった模試で平均点以上の点数を出しました。
このことは、本人の努力はもちろんのことですが、映像授業でなければ実現できないことです。仮に独学で春休み中に高校の地理の範囲をすべて勉強しようとしても、すべての範囲をやりきることはできないでしょう。なぜなら、教科書や参考書だけでは理解するのに時間がかかってしまうからです。
このように、自分で建てた勉強の予定をきちんと守れる人は映像授業に向いています。独学でも学力は伸ばせますが、映像授業を受けることで学力を最大限まで伸ばすことができるのです。
映像授業に不向きな人の特徴
目の前に講師がいないとダメな人
映像授業に不向きな人の中には、目の前に講師がいないと勉強の内容が頭に入ってこない人がいます。目の前に講師がいないとダメな理由は、人によってさまざまで何か一つに絞って言うことはできません。
たとえば、「目の前に講師がいないと、授業に緊張感がなくて集中できない」という人がいます。こういった人の場合、最初は映像授業を新鮮に感じて授業を受けていくのですが、結局目の前に講師がいないと集中できないと感じていきます。
かつて私が働いていた予備校では、そういった理由で塾をやめていく生徒が毎年何人かいました。しかし、ほとんどの生徒は「自分は映像授業に合ってない」と感じても、他の塾に転塾することはありませんでした。「高い授業料を払っているのでもったいなくてやめられない」という意見の人が多かったからです。
「映像授業に自分が合っているかどうか」はその人の感性によるので、実際に映像授業を受けてみなければ分かりません。もし最初に映像授業を受けて自分に合わなそうだと感じたら、映像授業の塾はやめた方が良いでしょう。
他にも、「映像授業だと分からないことを講師にすぐ質問できない」という人もいます。もちろん、塾には映像授業中の質問に対応できるように「チューター」と呼ばれる大学生のスタッフがいます。たしかに、そのようなスタッフがいれば問題がないようにも感じますが、それでも不十分な場合があるのです。
たとえば、英語の長文の授業を受けていて、長文中の設問の解説を聞いて分からないところがあったとします。チューターがその設問を読んですぐに分かるようなら問題ありません。しかし、その長文をすべて読まなければ分からない設問だと、チューターが解くのに時間がかかり、最悪の場合解けないこともあります。
そういったことが続くと、塾への不信感がつのって塾を利用しづらくなり、塾を最大限に使うことができなくなるのです。
また、塾によっては本部にいる質問対応を専門で行う講師に生徒の質問をFAXなどで送って、解答してもらうシステムがあります。ですが、これも講師とやりとりするのに時間がかかり、生徒が質問の内容を忘れたころに質問の解答が帰ってくることがしばしばあります。
このように、目の前に講師がいないために、自分が期待しているほどのものが得られない可能性があるのです。映像授業を受けてみて、「やはりライブの授業でなければダメだ」と感じたら、映像授業に不向きであると言えるでしょう。
自分で勉強の予定を管理できない人
先ほど、自分で勉強の予定を建てて、それを実行できる人は映像授業に向いていると紹介しました。一方で、自分で勉強の予定を建てられなかったり、建ててもそれを守れなかったりする人は映像授業に向いていないといえます。
このような人たちが、映像授業に向いていない理由は2つあります。1つ目は、映像授業は自分の好きなときに受けられるため、逆に授業の予定を後回しにしやすくなってしまうからです。
自分で勉強のスケジュールを組んできちんとこなせる人は、映像授業を受けてどんどん先に進んでいきます。しかし、そうでない人だと授業の予定を後回しにしてしまい、授業のスケジュールが少しずつ遅れていきます。そして、気づいた時には差をつけるために塾に通ったのに、逆に周りに差をつけられてしまうのです。
かつて私が働いていた予備校では、塾をやめていった生徒の大半はこのパターンでした。これらの生徒のほとんどは、予備校に入塾したばかりのころはやる気に満ちていて、授業をまじめに受けていました。けれども、自分の勉強スケジュールを管理できなくなると、結局面倒になってやらなくなってしまったのです。
さらに、2つ目の理由として、生徒が映像授業を欠席したときの塾からの電話が遅いことが挙げられます。映像授業は1回欠席しても、授業が映像のため次のときに受けられるので、欠席者への塾の対応が甘くなりやすいのです。
また、映像授業を主体にしている大手予備校では、営業が忙しくて授業の欠席者にまともに対応できない傾向にあります。そのため、勉強のスケジュールを実行できない生徒は、欠席しても塾の監視の目が甘いので勉強が進みません。
実際、私が予備校で働いていたときも、スタッフは授業の欠席者への電話をできていませんでした。もちろん、余裕があるときはきちんと欠席者の対応を行いましたが、夏期講習など忙しいときはほとんど行えない状態でした。
以上のように、自分で建てた勉強の予定を管理できない人は映像授業に向いていません。そのような人が映像授業の塾に行ってしまうと、楽なほうへと流されて勉強しなくなってしまい、学力は伸びないのです。
映像授業の内容を理解できる学力がない人
映像授業の内容を理解する学力がないと、当然ながら映像授業を受けても何も知識を得ることはできません。しかし、映像授業を主体にしている塾の中には、映像授業を受ける学力に達していない生徒が少なからずいます。
このような生徒たちは、体験で映像授業を受けたときに授業の内容をなんとなく「分かった気」にさせられて入塾してしまいます。映像授業の講師は「分かった気」にさせる名人のため、生徒は実際には分かっていなくても分かったような気になってしまうのです。
たとえば、中学の英文法が分からないのに、映像授業で高校の英文法を教わっても理解できません。しかし、映像授業を受けているうちは、生徒が「分かった気」になっているのでどんどん授業が進んでいきます。最終的に、高校の英文法を理解していなくても、完全にマスターした気分になってしまうのです。
けれども、実際に模試を受けてみると、まったく学力は上がっていないことが分かります。生徒は「分かった気」になっているだけで、模試の英語の問題を解けるほど理解はできていないからです。
こういった生徒は、最終的に英語の参考書を買って、中学の英文法から自分で勉強する羽目になります。もちろん、映像授業を受けたことがまったくの無意味だったわけではありませんが、結局一人で一からやり直すことになるのです。
以上のように、映像授業の講師により「分かった気」にさせられるため、授業内容を理解できないと映像授業には向きません。映像授業の講師は意図的に「分かった気」にさせているわけではありませんが、講師が分かりやすさを追求した結果、生徒を「分かった気」にさせてしまうのです。
映像授業の向き不向きを知る方法
映像授業に向いているかどうかを確認する方法は、自分で実際に映像授業を体験して確認することが一番です。結局、自分で実際に映像授業を体験してみてなければ、映像授業に向いているかどうか判断できません。
たとえば、部活で忙しくて予定の合わせやすい映像授業の塾にしたいが、自分で建てた勉強の計画をきちんと実行できる自信がない人はいると思います。
先ほど紹介した映像授業の向き不向きで言えば、部活が忙しくて時間がない分、映像授業は都合がいいです。しかし、自分で建てた勉強のスケジュールを守れないと、勉強をやりきれずに学力が伸びない可能性があります。
実は、このような人が映像授業に向いているかいないか、はっきりと言い切ることはできません。てきとうに言っているように聞こえるかもしれませんが、自分で映像授業を実際に受けてみて、いけそうだと感じたら大丈夫なのです。逆に、塾に厳しく管理してもらわないとダメだと感じたら、それは向いていない可能性が高いと判断できます。
結局、映像授業を受けて自分の感覚を確かめてみないことには、良い悪いは決められません。もし他人から絶対に合っていると言われた塾があっても、自分の感覚が良くなければ、勉強する気になれるはずがないのです。
このように、自分で実際に映像授業を受けてみて問題なさそうか確認することが、映像授業の向き不向きを知る一番の方法になります。
「分かった気」になっていないか確認する方法
ただし、映像授業の講師によって「分かった気」になることだけは気をつけましょう。映像授業の講師は話術の達人が多く、とても分かりやすい説明をしてくれます。しかし、その講師の雰囲気にのまれて、あたかもその内容を理解したかのような錯覚に陥ってしまうのです。
「分かった気」になっていないか確認する一番の方法は、授業で行った内容を親や友達、塾のスタッフに説明することです。
もし本当に授業の内容を理解しているのであれば、テキストなどを使って自分の口で説明することができます。ですが、十分に授業の内容を理解できていないと、授業中に出てきたキーワードを断片的にしか思い出せません
たとえば、数学の図形の授業を受けて「チェバの定理」を習ったとします。もし本当に理解できているのであれば、紙に図形と式を書いて「チェバの定理」について説明できるはずです。けれども、きちんと理解できていない人は、「チェバの定理」というキーワードは思い出せても、どのように使うかまでは説明できません。
このように、映像授業の体験を受けて自分が「分かった気」でいないか確認するためには、他の人に授業の内容を説明してみましょう。説明できれば、その映像授業でしっかりと学力を伸ばせる素地があると言えます。
まとめ
ここまで、映像授業に向いている人と向いていない人の特徴と映像授業の向き不向きを知る方法について紹介してきました。
映像授業は、ライブの授業と違って時間に縛られることなく授業を受けられるメリットがあります。そのメリットの恩恵を一番受けられるのは、普段忙しくて時間がない人や自分で計画建ててきちんと勉強できる人になるのです。
一方で、映像授業だからこそ学力が伸びない人たちもいます。ライブの授業でないとダメな人や、自分の勉強の計画を管理できない人、映像授業の内容についていけない人たちです。
とはいっても、今回の記事を読んで、自分が映像授業に向いているかいないか迷った人もいると思います。もし迷っているのであれば、映像授業の体験を受けてみて決める必要があります。
「百聞は一見にしかず」というように、実際に見て感じてみなければ、映像授業への適性を判断することはできません。ただし、そのときに映像授業の講師の「分かった気」にさせるマジックにだけは気をつける必要があります。友達や家族、塾のスタッフに自分が授業の内容を理解できているか確認してもらいましょう。
自分に合った塾を決めることは第一志望校に合格するためには必要不可欠なことです。映像授業の予備校や塾に通うかを迷っているのであれば、映像授業の体験をして映像授業への適性を確認しましょう。
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受験勉強を始めようと思って、塾・予備校を調べてみてもどこの塾が自分に合っているのかって分からないですよね?
実は、大学受験で第一志望校に合格するためには、どこの塾・予備校に通うかはそこまで重要ではありません。
というのも、100%合格させてくれる塾・予備校などこの世に存在しないからです。
むしろ、その塾・予備校の授業やシステム、スタッフを使ってどれだけ質の高い学習習慣を身に付けられるかに合格はかかっています。
私は、過去に大学受験の塾・予備校2社で、生徒に指導を行ってきました。その中で、志望校に合格した生徒は皆例外なく、塾・予備校を使い倒すことで、質の高い学習習慣を身につけている人達でした。
彼らは、塾の自習室に毎日通ったり、分からないところを徹底的に講師に質問したりするなど、塾の費用以上に塾に価値を見出していたのです。
ただ、これは塾・予備校にそういった質の高い学習習慣を身につけられる環境があってこその話になります。
第一志望の大学に合格するためにも、まずはどの塾・予備校でどんな授業、どんなサービスを行っているのかを知ることは重要です。それを頭に入れた上で、ここでなら質の高い学習習慣を身につけられると思える、自分に合った塾を選びましょう。